セルフメディケーション

自己診断・自己治療


セルフメディケーション

    セルフメディケーションとは

    セルフメディケーション(Self-medication)とは、自分自身で症状を判断して、適切な医薬品や医療製品などを用いて自ら治療することを言います。まだ日本では馴染みの薄い言葉かもしれませんが、現在の日本の医療保険制度とは異なる海外では、自分自身で健康を管理し、傷病に対しても自己の判断に基づき、医療機関を必要とするレベルではないと判断した場合は、市販医薬品を選んで治療に用いるという人が多くいます。
    こうしたスタイルは、医療機関の過剰な利用によって生じる費用(自己負担費用と保険医療費の両方)の軽減化や、診療による時間的制約を省くことができるという利点があげられます。また、近年、よく話題になっている院内感染(医療機関での二次感染)による被害を防ぐことにも効果があります。
    厚生労働省は、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」との認識を示しています。また、そうした観点から、2017年1月から、セルフメディケーションの推進を目的とした医療費控除の特例として、一部の指定された医薬品を対象にしたセルフメディケーション税制が開始されています。
    しかし、セルフメディケーションは多くの利点がある反面、医師などの専門家による診断や治療を介することなく行う自己判断やそれによる医薬品の使用などの自己治療には、間違った判断や不適切な医薬品の使用による危険もあります。
    そうした間違いを起こさないためには、医学・薬学的専門知識を有する薬剤師への相談が、安全なセルフメディケーションを行ううえで重要となります。
    症状をしっかりと確認し、体質や体調、罹患や持病の有無などを薬剤師に説明し、症状の緩和や治療に合った適切な医薬品の選択・用法についてアドバイスを受けることが、セルフメディケーションによる治療を成功させることとなります。

    セルフメディケーションフロー

    更年期障害対策としてのセルフメディケーションフロー

    セルフメディケーションの方法を用いるにあたっては、そのおおよその流れを把握しておくと良いでしょう。
    何故なら、セルフメディケーションで全て完治できてしまう、いっさい医療機関には関わらない、というように思い込んでしまうと、別の重大な疾患があっても、その発覚を遅れさせてしまうといった危険性があるからです。
    そして、なによりも重要な点は、特定の医薬品を用いることによって別の疾患を悪化させたり、副作用が起きたりすることにも注意が必要だからです。
    どのようなプロセスでセルフメディケーションを用いるか、状態によっては、医療機関での検診が必要な場合や、診察した医師から治療法や医薬品についての説明を受けたり、その後も医療機関での治療が必要となるケースもあるからです。

セルフメディケーションの利点と注意点

セルフメディケーションを検討される上での、利点と注意すべき点をリストアップしてみました。

[利 点]
◯ 医療機関での費用が掛からない
◯ 医療機関での受診・治療の時間が掛からない
◯ 医療機関で他の患者からの感染リスクがない
◯ 健康管理を習慣化できる
◯ 直接は関係ないものの、医療保険費を減らせられる
◯ 医薬品によっては、セルフメディケーション控除が受けられる

[注意点]
㊟ 自己責任となる
㊟ 医薬品に依存しやすくなる
㊟ 誤った選択や用法・用量を間違える危険性がある
㊟ 薬物乱用による副作用が起きる
㊟ 重大疾患の発覚を遅らせる
㊟ 一部に高価な商品がある

更年期障害にも

セルフメディケーション

更年期障害は、クリニックや病院などの医療機関で診断・治療を受けることもできますが、ご自身で症状を判断し、治療や予防を行う「セルフメディケーション」により、更年期障害を克服することができます。 また、健康食品により体調を整えたり、運動や食事で健康管理を行うなど、更年期障害になりにくい体質改善によっても予防することができます。
「更年期障害チェック診断」の結果に応じて、更年期障害の改善と予防に相応しいセルフメディケーションをお勧めします。
男性更年期障害について詳しくは「男性更年期障害」のページをご覧ください。

男性更年期障害の治療に関する考察

男性更年期障害は、「アンドロゲン」=男性ホルモンの欠乏によって発症します。そのため、その治療法として、医薬品などによりアンドロゲンを補充することが考えられます。
アンドロゲンの補充療法は、副作用の少ない安全性の高い治療法ですが、それでも全ての更年期障害対象者に使用可能かというとそうではありません。
まず、用いる対象は男性の更年期障害者であること、つまり女性更年期障害者には用いません。そして、これも重要な点ですが、「肝機能障害」や「前立腺疾患」などの罹患者には用いないか、担当医師による判断のもとに慎重に用いる必要があります。
また、一部に、「テストステロン(アンドロゲンの一種)」の補充療法によって、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高まったという報告例もあります。

アンドロゲンの補充療法についての適・不適の目安

[適応対象]

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アンドロゲンの補充療法は、男性更年期障害の症状および徴候のある40歳以上の男性が対象で、血中遊離型テストステロン値に応じて用います。
具体的には、血液検査による血中遊離型テストステロンの値が、8.5pg/ml未満に対しては適用されますが、8.5pg/ml以上11.8pg/ml未満(20歳代男性の平均値である16.8pg/mlの70%値で、正常範囲ながら低下傾向群となる)の場合は、症状および徴候の状態に応じてリスクと有用性についての説明を受けて選択することが必要となります。
そして、11.8pg/ml以上の場合は、不適応として用いることができません。
症状を診断した上で、別の治療を選択することになります。




[不適用(除外)対象]

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リストに掲げた疾患の罹患者は、アンドロゲンの補充療法は不適用(除外)対象となります。または、やむなく用いる場合は、医師の判断が必要です。
特に注意が必要なのは、前立腺がん、前立腺肥大症、男性乳がん、多血症、肝機能障害、重度腎機能障害、うっ血性心不全、重度高血圧、夜間睡眠時無呼吸症候群などを罹患されている場合、もしくはそれらの治療をされている場合は、アンドロゲンの補充療法を用いることはできません。
また、表記の不適用(除外)例の他にも、更年期障害に似た症状の「うつ病」などの罹患者の場合、ストレスコントロールができていない状態でテストステロンを補充すると視床下部にネ ガティブフィードバックを掛けてしまい、視床下部→脳下垂体→性腺系(HPGaxis)の機能障害を進行・悪化させてしまうことも考えられます。「うつ病」が疑わしい症状の場合は、まず医療機関での診断を優先してください。