LOH症候群

男性更年期障害


男性更年期障害

    男性も女性も似た症状?

    診断

    従来の更年期障害に対する見方は、主に加齢した女性の卵巣の内分泌機能低下によるステロイドホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン、または女性ホルモンとも呼ばれています)の欠乏による濃度低下と、家庭的および社会的環境などとのギャップがストレスとなって相互に関わり、「頭が重い,肩が凝る,腰が痛い,イライラする」といった自覚症状を訴える(不定愁訴)ものとされてきました。
    加齢した男性にも同様の症状を訴える人が少なくなく、症状や経過が女性の更年期障害と似ていることから、近年、それを男性更年期障害と言うようになりました。
    確かに、40代、50代の更年期を迎えた男性が発症した場合の「頭が重い,肩が凝る,腰が痛い,イライラする」といった自覚症状は、女性の更年期障害の症状とよく似ています。

女性更年期障害との違い

男性の場合の更年期障害は、女性の場合とどこが違うのでしょうか。
それは、発症のメカニズムに関わる性ホルモンの違いにあります。女性の場合は卵巣の内分泌機能低下によって生じる女性ホルモンの「エストロゲン」が欠乏・濃度低下することで起こりますが、男性の場合は生殖器官と副腎によってつくられる男性ホルモンの一つである「テストステロン」が加齢によって欠乏することで発症します。
女性更年期障害と男性更年期障害の共通点は、加齢によって引き起こされる性ホルモンの欠乏もしくは低下と言えますが、大きな違いはそのホルモンの種類が異なる点です。
男性更年期障害は、テストステロンの濃度低下によって起こる症候群として、医学的には「LOH症候群(late-onset Hypogonadism)」とか「加齢男性性腺機能低下症候群(PADAM = Partial Androgen Deficiency of the Aging Male)」と呼ばれています。

ホルモンについてのミニ知識

ホルモン

ひと言でホルモンと言っても種類は多く、体内の細胞から作られるホルモンは70種類以上もあると言われています。
ホルモンの生産部位は、間脳の視床下部、甲状腺、卵巣、睾丸などの内分泌器官です。それぞれの部位で作られたホルモンは、そこに貯蔵されますが、刺激などの要因によって血管を通って分泌されます。
ホルモンの成分には2種類あり、ひとつは甲状腺ホルモンやアドレナリンなどを構成するアミノ酸、そしてもう一つは卵巣や睾丸・副腎皮質から分泌される性ホルモンを構成するコレステロールを原料とした非タンパク質系のものです。
そのなかで、更年期障害に大きく関与するのが、性ホルモンです。
性ホルモンを大別すると、「男性ホルモン」と「女性ホルモン」があります。 さらに男性ホルモンには、アンドロステンジオン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロンなどがありますが、これらを総称して「アンドロゲン」=男性ホルモンと言われています。
いっぽう、女性ホルモンには、ステロイドホルモンの一種で排卵を準備するエストロゲン(卵胞ホルモン)と排卵を抑制するプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。
二つの性ホルモンは呼称から、男性と女性のそれぞれ固有のものと誤解されやすいのですが、女性の体内(卵巣)でも男性ホルモンは作られていますし、逆に、男性の体内でも男性ホルモンから変化する形で女性ホルモンが作られています。

ホルモンバランスの崩れが及ぼす症状は様々

男性と女性とでは異なる性ホルモンの働きによって、それぞれの身体的、精神的特徴を有しています。つまり、男性は男性ホルモン(テストステロン)によって男性特有の体躯と思考・振る舞いを発育させ、女性は女性ホルモン(エストロゲン)によって女性特有の体躯と体のリズム・振る舞いを司どる、という訳です。
それぞれのホルモンの分泌機能の低下や欠乏が、身体や精神に様々な影響を及ぼし、症状となって現れるのが更年期障害です。
また、ホルモンバランスが崩れることによって生じる悪影響は、更年期障害の症状だけではありません。たとえば、内臓脂肪の増加、メタボリック症候群、耐糖能異常、糖尿病、高脂血症リスクの増加、骨粗鬆症、心血管疾患といった深刻な諸症状や病につながることが懸念されています。
ただし、更年期障害の場合は、女性でも男性の場合でも、若年性更年期障害を例外とすれば、一定の年齢(更年期)に達した時に発症する一過性の症状であることから、あくまでも「症状もしくは症候」であって、時が経てば治ります。このことは、更年期障害の症状に直面されている人にとっては、とても重要な意味を持ちます。

男性更年期障害の症状判断

男性更年期障害の徴候は、精神的な症状の判別や身体の個人的な部位に関わることが多いため、身近な家族にも詳細を明かしにくいのが実情です。
症状の緩和や治療、また予防対策として適切なセルフメディケーションを行うためには、より正確な診断結果を得ることが重要で、そのためには、医療機関で診断を受けられることがベストです。
その際、医師の問診への応答内容を事前にチェックしたり、検査項目の特定に必要な情報を事前に決めておくことにより、更年期障害の正確かつ速やかな診断に役立ちます。

症状項目と検査項目

診断

【症状項目】
● 疲労感、抑うつ、短気などに伴う気分変調の度合い
● 知的活動、認知力、見当識(料簡、指南力)の低下度合い
● 睡眠障害の状況
● 筋容量と筋力低下による除脂肪体重の減少度
● 内臓脂肪の増加度
● 体毛と皮膚の変化
● リビドー(性欲)と勃起能の質と頻度
● 夜間睡眠時勃起の割合
【一般検査項目】通常の検査項目です。
● 理学的所見:身長、体重、BMI、ウエスト周囲径(臍周囲)、血圧、握力測定(左右)
● 検査:胸部 X線撮影、心電図
● 血算:ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数
● 血液生化学:TC、TG、HDL-C、LDL-C、ALT、AST、ALP、γ -GTP、Ca、P
● 一般検尿:蛋白、糖、潜血
● 耐糖能:FBS、HbA1C
● 腫瘍マーカー:PSA
【選択検査項目】更年期障害を前提とした選択検査項目です。
● 骨減少症と骨粗鬆症に伴う骨塩量の測定(医療機関でX線測定)
【泌尿器科系検査項目】男性更年期障害を特定した選択検査項目です。
● 理学的検査:精巣触診検査、容積測定、外陰部(陰茎)、体毛(髭,陰毛)、前立腺直腸内触診
● 質問票:IIEF(国際勃起機能スコア)、IPSS(国際前立腺症状スコア)
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health 医学会「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会 発表資料より

医療機関での検診を躊躇しておられる方に、自覚症状からの自己診断
(更年期障害チェック診断)

診断

男性更年期障害による症状および徴候は、多岐にわたっています。
大きく分けると、「身体症状」と「精神症状」になりますが、それぞれの症状は、概ね障害の進行度合いや順位性とは関係なく、いつどのような形で発症するかは特定されていません。また、人により症状は様々で、複数の症状が重なって現れることも少なくありません。

[身体症状]
● 不眠 ● 異常発汗 ● 多汗
● ほてり ● 頭痛
● めまい ● 視力低下 ● 耳鳴り ● 聴覚低下
● 頻尿
● 筋力低下 ● 筋肉痛
● 精力低下 ● 勃起障害・性機能低下
● Morning erection(朝の勃起)の消失 などなど

[精神症状]
● 集中力の低下 ● 頭のもやもや感
● イライラ感
● 無気力 ● 不安感 ● 疲労感
● 異常な眠気 ● うつ状態
● 記憶力の低下 などなど

簡単にできる自己診断は、「更年期障害チェック診断」のページをご覧ください。
なお、このチェック診断は、医療機関の問診などで用いられている"Hinemann's aging males symptoms (AMS) rating scale"をモデルに作成しています。





症候から治療へ

更年期障害の疑わしい症候を一つでも感じられたら、できるだけ早く診断(自己診断、もしくは医療機関での受診)をされ、更年期障害の兆候と発症の有無を確認するようにしてください。
ただし、特異体質である、持病がある、他の疾病も懸念されるなどの場合は、より正確な診断と治療が必要ですので、最寄りのクリニックや病院などの医療機関を受診してください。
セルフメディケーションは、自ら傷病・症候を判断し、薬剤師のアドバイスを得て、市販の医薬品などを用いることにより、自分自身の健康を管理し、あるいは疾病を治療するセルフケアの一つでが、その選択にあたっては、安全が最優先となります。
セルフメディケーションについて、詳しくは「セルフメディケーション」のページをご覧ください。